社会の授業で出てくる「産業の空洞化」。言葉はむずかしそうですが、中身は「工場が海外に出ていって、日本の中の仕事が減ってしまうこと」です。
ここでは、中学生にもわかるように、意味・起こる理由・影響を順番に説明します。
- 産業の空洞化とは、工場などの生産が海外へうつることで、国内の生産や働く場所が減り、技術ものびなくなること
- きっかけは円高・海外での販売・貿易のルールなど
- 影響は「雇用が減る」「地域の工場が閉まる」「技術が国内に残りにくい」
産業の空洞化とは?かんたんな意味
内閣府の報告書「日本経済2012-2013」では、空洞化を「海外生産移転によって国内の生産や雇用が減少し、国内産業の技術水準が停滞し、低下する現象」と説明しています。
中学生向けに言いかえると、こうなります。
- 海外生産移転…日本の会社が、工場を外国につくって、そこで製品をつくるようになること
- 国内の生産や雇用が減少…日本の中でつくる量や、働く人の数が減ること
- 技術水準が停滞し、低下…ものづくりの技術が日本の中でのびなくなること
「空洞」は、中身がからっぽの穴という意味です。工場が出ていったあと、国内の産業に穴があいたようになる様子から、こう呼ばれています。
なぜ工場は海外にうつるの?
内閣府の報告書では、時代ごとに次のような理由が挙げられています。
| 時期 | 主なきっかけ |
|---|---|
| 1980年代後半 | プラザ合意のあとの円高、貿易を制限する動き(輸出の自主規制など)、ヨーロッパの経済統合への備え |
| 1990年代半ば | 大きな円高が進み、アジアへの生産の移転が加速 |
| 2000年代半ば | 新興国の経済が発展し、現地で売るために現地でつくる動きがふえた |
| リーマンショックのあと | ふたたび円高が進み、空洞化への心配が高まった |
円高だとなぜ海外に出るの?
円高とは、外国のお金にくらべて円の値打ちが高くなることです。円高になると、日本でつくった製品を外国で売るときに、外国の人から見た値段が高くなり、売れにくくなります。そこで、売る国の近くや、つくる費用が安い国で生産しようと考える会社がふえます。
売りたい国でつくる
人口がふえて豊かになっている国では、製品がたくさん売れます。売る場所の近くでつくれば、運ぶ手間が少なく、その国の人の好みにも合わせやすくなります。
どれくらい海外でつくっているの?
会社の売り上げのうち、海外の工場(現地法人)の売り上げがしめる割合を「海外生産比率」といいます。内閣府の報告書では、この比率は1990年度以降、上がる傾向にあるとされています。2010年の時点で、輸送機械(自動車など)は39.2%、電気機械は20.9%でした。
つまり、自動車の分野では、売り上げのおよそ4割が海外の工場によるものだったということです。
産業の空洞化で何が起こる?
1 働く場所が減る
工場が海外にうつると、その工場で働いていた人の仕事がなくなるおそれがあります。内閣府の報告書では、製造業で働く人の数は長い目で見て減ってきており、特に繊維の分野では、2010年に働く人の数が1990年の4分の1まで減ったとされています。
2 地域の元気がなくなる
大きな工場が閉まると、部品を納めていた小さな工場や、働く人が使っていたお店にも影響が出ます。工場を中心に発展してきた町ほど、影響が大きくなります。
3 技術が国内に残りにくくなる
ものづくりを海外でするようになると、日本の中で技術を受けつぐ機会が減ります。空洞化の説明に「技術水準の低下」が入っているのはこのためです。
ただし、すぐに失業につながるとはかぎらない
内閣府の報告書では、ほかの仕事へのうつりかわり(労働移動)がスムーズであれば失業は生じないが、急な移転で働き口の調整が追いつかないと、失業や雇用の減少が起こりうると説明しています。空洞化は、良い悪いを一言で決めにくいテーマです。
テストで書くときのポイント
- 意味:「工場が海外にうつり、国内の生産や雇用が減ること」
- 原因:「円高」「海外の市場で売るため」
- 影響:「国内の仕事が減る」「技術がのびにくくなる」
記述問題では、「原因 → 海外移転 → 国内への影響」の順で書くと、筋が通った答えになります。
よくある疑問(Q&A)
Q. 産業の空洞化は、どんな産業で起こりやすいの?
A. 内閣府の報告書では、輸送機械(自動車など)や電気機械で海外生産比率が高いこと、繊維で働く人の数が大きく減ったことが示されています。たくさんの部品を組み立てる工業や、人手のかかる工業で話題になりやすいといえます。
Q. 空洞化を防ぐにはどうすればいいの?
A. 国内でしかつくれない高い技術の製品にとりくむことや、新しい産業を育てることがよく挙げられます。教科書の説明とあわせて、自分の考えをまとめてみましょう。
Q. 「空洞化」と「グローバル化」はちがうの?
A. グローバル化は、人・もの・お金が国をこえて動くようになる広い流れのことです。産業の空洞化は、その流れの中で起こる「国内の生産や雇用が減る」という面に注目した言葉です。
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